生体情報処理

私たちは,医療現場や他の工学分野の研究者と共同して,データ解析技術を用いた人間の理解とその工学的応用,特に新規な医用デバイスの開発を行っています.これらはどれもチャレンジングなテーマばかりで,サイエンスの観点からも興味深いものばかりです.

てんかん発作兆候検知

てんかん(Epilepsy)とは,脳細胞のネットワークに起きる異常な神経活動に起因するけいれん,意識障害などの発作を来す疾患あるいは症状です.

平成24年春に,京都市東山区の祇園で起きた自動車暴走により,多数の死傷者が出た痛ましい事故が起きました.この事故の原因として,ドライバのてんかん発作の疑いが一部で報道されたことから,てんかん患者の自動車運転免許取得を制限すべきとの声も挙がりましたが,てんかん患者の運転免許取得は,平成14年改正道路交通法にて条件付きで認められたもので,このように法でてんかん患者の行動を制限しようという議論は,その流れに逆行するものといえます.

てんかん発作に伴う事故によって,重傷,死亡につながる場合があり,交通事故に限らず,発作に伴う風呂場での溺死や,コンロでの調理中における火傷は数多く報告されています.しかし,患者が数秒前でもてんかん発作の兆候を検知できれば,発作までに身の安全を確保することができ,生活の質(QoL)を改善することができると期待されます.たとえば,運転中であっても発作兆候を検知し車を安全に停車できれば,法で再びてんかん患者の運転免許取得を過剰に制限する必要はありません.

本研究は,大学病院や他大学と共同し,てんかん発作の兆候を検知できるシステムの開発を行っています.本研究室では,てんかん患者の心拍データより,てんかん発作兆候を検知できるアルゴリズムの開発とセンサへの実装の検討を行っています.

将来的には,開発した発作兆候検知システムに基づく環境制御技術(発作兆候検知による自動車の自動停車など)の開発や,他の発作が起きる病気への横展開を視野に入れ,研究を進めています.

ストレス推定デバイスの開発

現代はストレス社会とも称され,健康管理のためにはストレスマネジメントが必要不可欠とされています.ストレス推定に有効な情報のひとつとして心拍データがありますが,心拍の測定には身体をある程度の時間拘束する必要があるため,容易に測定できるものではありませんでした.きめ細やかなストレスマネジメントのためには,より簡易に短時間で心拍を測定できるデバイスが求められます.

そこで本研究は,民間企業や他大学と共同し,マウスなど日常的に用いるデバイスに心拍を測定するセンサを組み込む事で,ユーザに意識することなくストレスの推定が行えるシステムの開発を行っています.本研究室では,より短時間でストレスを推定できるアルゴリズムの開発を行っています.

脳波解析

現段階では未公開です.


求める学生像

これらの研究は,工学分野のみならず,医学系を含め様々な異分野の人との協業が求められます.異分野の人とも積極的にコミュニケーションを図り,世界中どこにでも行けるフットワークの軽い学生を歓迎します.

また,開発したデバイスは世の中に普及させないと,役に立ちません.すなわち,いかに成果をビジネスに繋げられるかも,実用化を目指した研究では重要です.研究からサービス開発まで一貫して体験してみたいという意欲のある学生も,歓迎します.

身につくスキル

統計学・多変量解析・信号処理・プログラミング・電子回路・神経科学


業績(発表論文)リスト

論文リストについては,各教員のページを参照して下さい.