スモールデータ解析を駆使して,ビッグデータでは得られない価値を創造する

今,巷にはビッグデータや人工知能(AI)という言葉が溢れています.第三次AIブームとも呼ばれていますが,現在のAIは,大量の正解データを機械に学習させることで,学習に用いていない未知のデータを識別するというフレームワークを採用しています.これは大量の正解データが低コストで得られることを前提としています.たとえば,インターネットには猫の画像が沢山あり,多くの人がブログでの記事やSNSのハッシュタグでこの画像は「猫」であるとラベルを付けてくれています.このような正解ラベルが付与されたデータをインターネットから大量に収集して機械に学習させれば,機械が画像の中から猫を自動的に探してくれるようになります.これは「集合知」と呼ばれるもので,データを蓄積することで将来的にAIの性能は人間を超越し,様々な人の仕事を奪うと騒がれています.

これは本当でしょうか?

ビッグデータの研究はすでにレッドオーシャンです.AI業界は大量のデータと高速な計算機,優秀なエンジニアを沢山抱えているところが,必然的に勝てるようになっています.すなわち,AI業界はすでに装置産業であり資本力の勝負となっています.これまで,人にも設備にも潤沢な資金を投資してこなかった本邦は,もはやビッグデータ領域においてGoogleやFacebookに追いつくことはできません.

スモールデータの世界は違います.スモールデータとは,たとえばある装置の異常操業データなどデータの発生が稀だったり,疾患についての臨床データなど倫理的な理由で収集するのが困難なデータのことを指します.さらにスモールデータでは,限られた専門家でないとデータの解釈が困難な場合が多く,ラベル付けも高コストであったりします.異常脳波を正確にラベリングするのは,判読医や専門技師でないと務まりません.したがって,スモールデータを対象とする研究においては,データをクリーニングしフォーマットを揃え解析可能なデータセットを構築すること自体にも,大きな価値があります.

スモールデータ解析においては,データの背後にある因果関係や物理,生理学についての知識,さまざまなケーススタディ,さらに専門家の持っているノウハウ・暗黙知などを積極的に取り込む必要があります.そしてそのような知識は少数の専門家が作っていることを考慮すると,AIの性能は人間を越えることができず,高々,少数の専門家の性能を近似するのが限界であることがわかります.

このようなスモールデータ解析は,理論研究の立場からすると,ad hocでアカデミックでないように感じられるかも知れません.しかし現実の複雑な問題の解決には,理論だけでは対処できず,どうしても試行錯誤を含みます.その試行錯誤の中でスモールデータ解析に関してのノウハウが蓄積され,さまざまな分野の知識とともに,そのノウハウは体系化されるでしょう.したがって,スモールデータの研究には,まだまだブルーオーシャンが拡がっているのです!

我々の研究室では,てんかんや睡眠障害,脳卒中などの主に中枢系の疾患を対象に,多くの病院,研究機関と連携して臨床データの収集を収集しています.診療科を跨いで日本各地に構築した病院,専門医とのネットワークこそが我々の最大の財産だといえます.それでも臨床で不足するデータは,自分たちで動物実験や被験者実験を行ってデータを収集し,その解析を通じて診断アルゴリズムと医療機器の開発を行っています.さらにこれらのデータ解析によって,さまざまな疾患の機序の解明など,基礎医学・生理学への貢献を目指しています.

常に我々は,スモールデータ解析による新たな価値創造に興味のある学生・研究員を求めています.本研究室では,潤沢な研究資金を背後に,最高の研究環境に加えて国内学会,国際会議での発表,さらに懇親会を通じて様々な分野(研究者・メディア・行政関係者など)の人と交流できる機会を提供しています.自ら手を動かして,社会問題解決のために異分野の人と協業でき,フットワークが軽く,そして将来的に人と人とのハブになれる学生を歓迎します.

*研究室全体の説明は研究室紹介研究室Webサイトおよび紹介ポスタを参照してください.また,研究室見学,進路相談については,加納教授にコンタクトしてください.

2017.11.06
京都大学テックフォーラムで講演しました.
2017.11.04
京都新聞,共同通信などで,AMED班会議について紹介されました.
2017.11.03
てんかん学会にて,てんかん発作予知システム開発についてのAMED藤原班・班会議を行いました.
2017.10.26
日経産業新聞でてんかん発作予知について紹介されました.
2017.10.23
医療AI人材育成に係る厚労科研研究班に参加します(奥村班).
2017.10.23
てんかん診療支援AI開発の研究で住友電工グループ社会貢献基金学術研究助成に採択されました.
2017.09.24
IEEE ASCC2017に,佐藤君の統計的因果解析に係る論文が採択されました.
2017.09.21
SICE JCMSI誌に発表した居眠り運転検知に係る論文で,計測自動制御学会 論文賞を受賞しました.
2017.09.21
熱中症アラーム開発の取り組みについて,琉球新報で紹介されました.






データ解析と生体信号処理に係る研究について説明しています.








おすすめの小説や啓蒙書,漫画などに関するレビュー.






ヒューマンシステム論分野に配属された学生のみなさんへ

研究室での勉強・研究を少しでも有意義なものにするために,まず岩熊先生の書かれたドキュメントに目を通してください.ほぼすべての教員が,毎年同じ事を思っています.

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